特典航空券を発券するときの最大の障壁は何と言っても特典枠の空き状況でしょう。有償航空券に比べて圧倒的に空席が絞られているため、特にハイシーズンは絶望的に空席が取れない航空会社もあります。最近では使用機材の小型化や空席コントロールの精緻化によりこの傾向はより一層強まっています。
今日は私が体験したシンガポール航空での空席待ち体験を紹介させて頂きます。
SQ特典空席待ち体験
この時は年始の帰国ラッシュ時のフライトでした。当然ながら1年でも1,2を争うドHighシーズン。そんな中、夏頃に何気なくWEBで空席照会したところ奇跡的に羽田便のファーストクラスに1席だけ空席があったので速攻で予約を押さえて貰いました。しかし羽田便はB777での運行なので、折角ならスイートクラスが体験できる成田便のA380に乗りたいと思っていました。
そこで羽田便を押さえつつ同時にSQ12便の空席待ちを入れてもらいました。この手続はWEBでは出来ないので当然シンガポールの予約課に電話してやってもらいます(日本の予約可では対応不可)
それでこんな感じの予約になりました。
・Confirmed : SQ634 SIN(14:05)→HND(21:40) B777-300
・Wait-listed : SQ012 SIN(09:20)→NRT(17:05)A380-800
ここでありがたかったのは、このまま発券しないでずっとホールドさせて貰えたことです。JALもANAも基本的にアワードのホールドは認めていませんし、比較的寛容なAAでも5日程度しか未発券状態ではホールドできません。その点SQは非常に良心的なキャリアだと思いました。
複数回の「プッシュ」も虚しく、落ちてこず
それから暇を見つけてはシンガポールに電話して、キャンセル待ちのプッシュをお願いしていました。※プッシュについては後述
しかし努力の甲斐もなく結局出発までに希望便の空席待ちが落ちてくることはありませんでした。そのため仕方なく一旦羽田便で発券してもらい、引き続き成田便は空席待ちのまま日本を出発することとなりました。
そして、SQ便搭乗の前日。この日はシェムリアップからシルクエアーでシンガポールに到着し、チャンギで23時間50分の乗継時間がありました。そこで、アライバルラウンジとしてプライベートルームに入るついでに、翌日便のキャンセル待ちの最終調整をラウンジのコンシェルジュにお願いしました。
私:「すいません、明日の午後の羽田行きの予約を持っているのですが、午前中の成田便に変更してもらえませんか?」
コンシェルジュ:「お客様のチケットはリダンプションチケットなので、こちらでは変更できません。クリスフライヤーのデスクに確認します…。」
栗デスクに内線で電話。
コンシェルジュ:「○○様、羽田を成田に変えるとルート変更になってしまうので、変更できないとのことでした…。」
私:「いやいや。そんなはずはないですよ。SQでは羽田と成田をマルチエアポートとして扱っているはずなので変更は可能なはずです。私が直接クリスフライヤーデスクと話すので、電話を貸してください。」
電話を借りて栗デスクに直談判w
私:「すいません、今、Fラウンジから連絡しているんですが、明日の午後の羽田行きの予約を持っているのですが、午前中の成田便に変更してもらえませんか?」
栗:「はい、○○様~、確認させて頂きます。」
栗:「○○様、残念ながら明日の成田便は満席でございました。」
私:「WEBで見ると有償枠には空席がありますよね?ラストミニッツでも調整して貰えないでしょうか?」
栗:「有償枠と特典枠は違うんです…」
私:「いやいやそれは承知していますが、空席を待っている人がいるのにSQは空気を飛ばす会社なんですか?僕はSQのA380の大ファンなので是非羽田便ではなくてA380で運行される成田便に乗りたいんですよ!」
栗:「お~そうなんですか!分かりました。では調整しますのでラウンジのスタッフに電話を変わって下さい。」
ん?マジで調整してくれるのだろうか?ダメ元で交渉したのに本当に変えてくれるとは意外でした。そしてラウンジのコンシェルジュからチケットの書き換えに時間がかかるのでそれまでプライベートルームで待っていてくれと言われ、アテンドの方とプライベートルームへ移動しました。
SQ利用者の中でもマジF利用者しか入れないSQ最高峰のラウンジ「プライベートルーム」。SQはこうした差別化が上手な会社ですよね。
本当に変更が成功するのか定かではありませんでしたが、一足早くシャンパンで祝杯を上げました(笑)
しばらくシャンパンを飲みながらネットしているとコンシェルジュが戻って来て、無事SUITEと書かれた黄金の搭乗券が手渡されました(笑)
以上は私のシンガポール航空での体験談でした。
その他、今までの体験を含めて特典航空券の空席待ちが落ちてこない時の対処法を以下にまとめます。
1.有償枠の空き状況を確認しよう
当然の話ですが、混んでいるフライトより空いているフライトの方がキャンセル待ちは落ちてきやすいです。複数便が飛んでいる路線では出来るだけ空いている便を選んで空席待ちを入れるようにします。また各社のHPを見てもある程度の空席状況は把握できますが、より細かく把握したい場合には有料にはなりますがKVSツールやExpertFlyerなどを使うと良いでしょう。私はKVSツールを使っています。これを使えば予約クラスごとの空席数が分かります。
高い予約クラスまで満席になっている便では特典に座席が開放される可能性は極めて低いと言わざるを得ません。逆にガラガラのフライトであれば今後有償枠を調整して特典枠が増えることも考えられます。この辺りの調整はキャリアに寄って違いますが、主要キャリアのオペレーションはこんな感じかな~と思います(あくまでも個人の体験に基づく感覚的なものです)。
ANA
F:一定の絶対数が決まっていてたとえガラガラだとしても特典枠は増えない。
C:空席状況に応じて有償枠も転用される。
JAL
F:空席状況に応じて有償枠も転用される。JGC以上はかなり配慮される。直前開放も期待できる。
C:空席状況に応じて有償枠も転用される。JGC以上はかなり配慮される。直前開放も期待できる。
SQ
F:予約率が高いフライトでは空席があっても開放してくれないが、ガラガラの場合は有償枠の転用も行っているような雰囲気。
C:予約率が高いフライトでは空席があっても開放してくれないが、ガラガラの場合は有償枠の転用も行っているような雰囲気。
米系
F:空席状況に応じて有償枠も転用されるが直前開放になることが多い。
C:空席状況に応じて有償枠も転用されるが直前開放になることが多い。
ANAのFクラス場合は純粋に特典枠にキャンセルが発生しない限りキャンセル待ちが落ちてくることはなさそうな雰囲気です。それに対してJALはJGC以上だとかなり配慮している感じがします。以前、前日にキャンセル待ちが落ちてきて当日空港に行ってみたらビジネスクラスにインボラUPされたこともあるくらいです。そこまでするならキャンセル待ち客まで乗せる必要もなかったのに、と申し訳なくなってしまうくらい素晴らしい対応をしてくれたこともありました。また、米系は割と上級クラスに空席を残さずに飛ばすスタンスのようで、24時間前や空港チェックイン時など比較的直前になって空席を埋めるオペレーションをしてきます。
2.キャンセル待ちの待ち人数を確認しよう
その便のキャンセル待ちに何人待っているかも可能性を占う上で重要な要素です。これは専用の予約端末でないと確認できないと思われますので、航空会社のエージェントに確認しましょう。「今、何人くらい待っている人がいますか?」とダイレクトに聞いても構いません。航空会社によっては教えてくれないケースもありますが、大体のケースでは待ち人数を教えてもらえます。
より待ち人数が少ないフライトの方が空席待ちが落ちてくる可能性は高そうですが、後述のように空席待ちには優先順位があるので待ち人数だけでは一概に判断できませんが、一つの目安としては使えるでしょう。
3.会員ステータスが反映されているか確認しよう
一般的に空席待ちは運賃種別とステータスによって優先順位が決まってきます。特典より有償の優先順位が高く、一般会員より上級会員の方が優先順位が高いです。ワンワールドであれば、エメラルド・サファイア・クリスタル、スターアライアンスであればゴールド・シルバーといったステータスです。上級会員ステータスを保有していれば仮に先に待っている一般会員がいたとしても待ち行列の中で横入りできるという訳です。
また航空会社によっては自社固有のステータスを用意している場合があり、JALグローバルクラブ(JGC)やANAスーパーフライヤーズカード(SFC)などのステータスがある場合にはさらに空席待ちにおいて優遇されるようです。ちなみに、私はJGC会員になって以来、国際線のキャンセル待ちで一度も失敗した経験がありません。それくらい上級会員であることはキャンセル待ちにおいて優遇されているということなのだと思います。(特にJAL)。
そのため上級会員ステータスがある場合にはマイレージステータスが予約記録にきちんと反映しているか確認しておきましょう。
4.プッシュをお願いしよう
特典が落ちてこない時にエージェントと話していて時折出てくる「プッシュ」という言葉。これは乗りたい!という航空会社に対する強い意思表示として使われる言葉です。
最終的にキャンセル待ちのコンファームは人の手で行っている(と思われる)ので、乗りたい旨を空席コントロール部署にアピールしておくことは非常に重要だと思います。本当に効果があるかは定かでないものの、私は空席待ちを入れる時は必ず「プッシュ」をお願いするようにしています。
5.ラストミニッツ開放を狙おう
出発間際になっても空席待ちが落ちてこない場合、ラストミニッツで特典開放されてくるチャンスも見逃しては行けません。ラストミニッツ開放とは、航空会社が売れ残りそうな座席を出発間際になって特典に開放してくることです。一般的には出発1~2週間前から開放するケースが多いかと思います。このようなオペレーションをやるかは航空会社によって様々ですが、JALやCXなどはラストミニッツ開放をやる傾向にあります。逆にANAやSQなどではあまりお目にかかりません。
第1希望のフライトが取れなくても、別の航空会社や路線にラストミニッツ開放がないかをチェックしてみましょう。
6.万一落ちてこなかったら、GO SHOWという荒業も
何度プッシュをお願いしても一向に空席待ちが落ちてこないケースは多々あります。その場合、最後の最後の交渉チャンスは空港です。
GO SHOWといって予約がないのに空港に行って飛行機に乗せてもらうというやり方があります。この場合、乗れる保証はありませんので余程のことがない限りは別便の予約を持って空港に行くことになると思います。今回紹介した私の事例では後続便の予約を持って空港に行き、空港で交渉して第1希望便に変更してもらえたという訳です。
また先日の体験談なのですが、カタール航空のファーストのチケットを持っていたのに、ファーストクラスに空きがなかったのでやむを得ずビジネスクラスを押さえていたという状況でした。この空席待ちも一向に落ちてくる気配がなく、最終的には出発前日に空港に行って座席調整を依頼しました。このときはヒースローの地上職員からドーハの本社にリクエストを流してくれ、翌朝チェックインするとファーストの座席が用意されていた次第です。
いくら空港といってもカタール航空のようにドーハ以外の職員に空席コントロール権限がない航空会社の場合、一旦本社に照会を取らなければならず時間を要することもあるので、可能であれば出発前日に空港で相談しておくのが理想です。
ただし、特典航空券の場合には空港でチケット処理ができないと断られるケースもあります。また、マイレージプログラムによっては出発96時間前までしか変更できないという規定を設けている航空会社もあります。そのためこの方法を使う場合には発券元のマイレージプログラムの規約を確認しておきましょう。(JAL,ANAは当日空港での変更は原則不可です)
Bottom Line
マイルは貯めるだけでは何の価値もなく、お得に行使してこそ価値があるものです。しかし「貯める」より「使う」方が実は何倍も難しいのです。その「使う」ことを難しくしている一番の理由は何と言っても特典の取れ難さです。でも特典枠が空いていないからといって諦めてはいけません。空席待ち勝負はマイラーであれば誰しもが経験する登竜門ですので、是非この記事に書いたようなテクニックを実践してアタックして頂けたらと思います。航空会社によっても空席待ちの取り扱いは様々ですが、何度もトライしているうちに航空会社ごとの特性もだんだんと分かってくるかと思います。
金太郎飴のような流行りのブログと違って笑、ためになる記事をありがとうございます。
>ちなみに、私はJGC会員になって以来、国際線のキャンセル待ちで一度も失敗した経験がありません。
昨年JGCになったばかりで、実際のところは分からなかったのですが、キャンセル待ちで優遇してもらえるようで良かったです。
>マイルは貯めるだけでは何の価値もなく、お得に行使してこそ価値があるものです。
本当にそうですよね。マイルを貯める方に意識が集中していたのですが、大量に貯めても基本悪い方向に改定される一方ですので最近は躊躇せず使うようにしています。
なお、ラストミニッツ開放に関しては、私もSQのファーストクラスを狙っていたときにwebでの検索では最後まで空席が出なかったのが、電話で交渉したところ2日前にファーストクラスを開放してもらいましたので、直接交渉すれば搭乗できる可能性が高い航空会社なのかもしれません。あとエティハド航空は前日笑に複数席開放しているのをよく見ます。
◆ゆるりさん
マイレージ長者のゆるりさんなら大量のマイルをお持ちでしょうから、どんどん使ったほうがいいですね!
なるほど、やはりSQの特典は交渉で出てきましたか。SQは要望に極力答えてくれるように動く文化がありますから、
特典枠についても個別に相談すれば空き次第でなんとかなることも結構あるのかもしれませんね。
EYのラストミニッツ情報ありがとうございます。
前日は厳しいものがありますが、アップグレードの場合には使えそうな情報ですね!
そうですね、NHに関してはF は満席になるまで詰め込まないのもサービスのうちと考えているようですね。私がFに一人しか乗っておらずガラガラでC.Yが満席の時も開放しませんでした。
JLは結構降ってきます、いったん破綻したことから株主総会で搭乗率が問題視され紛糾するため、JGCを中心に開放するのでしょう。
NHがあえてFを開放するのは欠航などによるルート変更でにっちもさっちもいかない時だけのようです。
◆友蔵さん
はじめまして、コメントありがとうございます。
仰るっとりJLは常に満席、NHはほどほどに空席があることが多い印象です。
JLが席を埋めるのは見た目の搭乗率をよく見せるためですか、納得です!
大変勉強になりました。引き続きよろしくお願いいたします。